きみのいた森で(ピート・ハウトマン 著、こだまともこ 訳)

「幽霊っていうのは、生きている人間の思い出にとりついた秘密なんだよ。私たちがその秘密を持ち続けているあいだ、幽霊は離れようとしない。じーっと待っているんだ。忘れてくれるのを、待っているのさ。おやじは六十年前に亡くなったが、まだこの頭の中にいる。ずっと離れずにいるんだ。」(ザックじいちゃん)

「私はいつもこう思うんだ。もしも、あの晩、ロバート・ローゼンがおやじのあとを追ってゴルフコースに行かなかったら、いったいどうなってたかってね。私らが何かを決断しなきゃいけない時は、目の前にいくつもの分かれ道がある。これから起きうることが、数限りなくあるんだ。ひょっとして、世界はいくつもあって、私たちは自分が生きているこの世界しか知らないんじゃないか。もしかして、ある世界では、私の父親がローゼンを殺したかもしれないし、別の世界ではその反対かもしれない。もしかしていまだにこのゴルフコースで大勢の人間がゴルフボールを打っている世界だってあるかもしれないんだ。」「じゃあ本当は何もないってこと?」「何もかも本当だってこと。で、何もかも本当じゃないってことさ。さっき気象予報士が、明日は大きな嵐が西から来るって言ってたな。予報が当たったら、森の木が何本か倒れるかもしれん。だが、もし木が倒れたとしても、おまえがそれを見ていなくて、倒れた音を聞いていなければ、その木は本当に倒れたと言えるんだろうか?だって、お前の世界では、その木はいまだに立っているんだから。で、ある日、おまえはその木が地面に倒れているのを発見する。その瞬間に、おまえが知っていた世界と知らなかった世界が一緒になって、ひとつの現実になる。その木が倒れたってことがね。」(ザックじいちゃんがスチューイに語る場面)

”いろいろな未来が存在する可能性があると信じている。私たちはみんな、色糸で絵を織りだしたつづれ織りの壁掛けのなかで生きているようだ。それも糸がもつれ、ぼろぼろになり、もはやどんな絵かわからなくなったつづれ織りのごとく、様々な可能性を秘めた世界に。たくさんの世界がある―――人々の思いと同じ数だけの世界が。父は今、父の世界でゴルフをしているが、私の世界では、父は死に、この世を去っている。私が疑問に思っているのは、もしひとつの世界がふたつに分かれたら、そのふたつが再び結ばれてひとつになることはあるのだろうかということだ。私に父の姿が見えるのは、そういうことなのだろうか?そうなのかい、おやじ?それとも私が見ている幻が一部なのか?”(ザックじいちゃんの原稿)

”真実は、憎しみやうそよりも強い力を持っているのだろうか?もしそうなら、真実を共有すれば、さらに強力になる。真実は、こわれてしまったものを、もとどおりにすることができるか?破壊された真実のかけらを、くっつけることができるのだろうか?私は臆病すぎて、それを知ることはできない。”(ザックじいちゃんの原稿)

以上、本文より。

大好きなおじいちゃんを亡くしたスチューイ。エリー・ローズという親友ができて、やっと元気を取り戻した。
毎日のように森で一緒に遊んでいたが、ある日、エリー・ローズの姿がぼやけて―――そのまま消えてしまったのだ。
この森には、どんな秘密がかくされているのか?!
パラレルワールドに暮らすふたり、おじいちゃんの過去やなぞのキノコ男をめぐるミステリアスな展開、スチューイとエリーのピュアな思い・・・様々な要素を盛り込んで、奔流のように読者を引き込んでいく迫力のある物語で、2019年度エドガー・アラン・ポー賞(児童図書部門)を受賞。

コメント

タイトルとURLをコピーしました