新聞

「1日240時間」とリキッド消費(日本経済新聞・2025年11月1日付)

大阪・関西万博の期間中、テクノロジーを皮肉った前衛的なSF映画が会場で上映されていた。映画のタイトルは「1日240時間」。1970年の大阪万博時に制作された映画で、脚本は小説家の安部公房、監督は勅使河原宏。映画の内容はこうだ。ある科学者が人...

時の旅人(アリソン・アトリー著、松野正子訳)

「読み書きなんぞできなくても、わたしは、ちゃんとうまくやってきた。つまらないものを詰め込んで頭を混乱させたりしないで、いつもすっきりさせとくのさね。」”安全な世界がそこにありました。立ち去りさえすればいいのでした。けれども、私は、他の人には...

その時鐘は鳴り響く(宇佐美まこと 著)

"ダメ元でも可能性を潰していけば、やがて見えてくるものがあるだろう。「捜査に無駄はない」教わったことを愚直に踏襲するだけだ。”「いいか。人の思惑や感情には関係なく、この世には正しいこと、守るべき筋がある。誰にも見えていて、誰にも公平で公明な...

アミ 小さな宇宙人(エンリケ・バリオス 著、石原彰二 訳、さくらももこ 絵)

「すべてのものは、みな関連し合って成り立っているんだ。偶然なんてひとつもないんだよ。」「まだ現実に起きていない先のことをあれこれ気に病むのではなく、いま起きていることにあたることの方が賢明なことだよ。(中略)もっと”いま”という時を楽しむよ...

ドッペルゲンガー宮《あかずの扉》研究会流氷館へ(霧舎巧著)

「そうね。大事なのはわかることじゃなくて、わかってあげることなのよね。これって、人間が生きていく上でとっても重要なことだと思うわ」(森咲枝)「他人を蔑んだ言い方をする時、その本人は周りからそれ以上の蔑んだ目で見られていることを自覚するんだな...

本を愛しすぎた男 本泥棒と古書店探偵と愛書狂(アリソン・フーヴァ―・バートレット著、築地誠子訳)

”私は古い本の匂いをかぐと、思いはそれが書かれた時代へといつも飛んでいってしまう。物語の舞台となった時代や場所から香りがじかに漂ってくるような気がしてしまうのだ。””熱心な読者が(きっとコレクターも)自分の本を大事にするのは、結局のところ本...

おかげさまで生きる(矢作直樹著)

”人生は、寿命があるからこそ素晴らしい。限られた時間をいかに過ごすかが大事。どんな人にも永遠の寿命はない。だからこそ、今を楽しみ、今を生きることに集中しよう。”(第1章 見えないものに意味がある ≪死ぬことは普通のこと≫ より)この中で、「...

箸墓幻想(内田康夫著)

"浅見はそんなふうに、ロマンに満ちた古代史に想いを馳せるのが好きだ。額田王や大津皇子が霞立つ大和の野を逍遥するありさまを想像するだけで、胸がはずむ。””小池と交わした会話はもう少しあったと思うが、浅見が記憶しているのはそれだけだ。とくに「勉...

出口のない農場(サイモン・ベケット著/坂本あおい訳)

舞台となるのは、出口のない農場で、足を踏み入れると、そこはまるで現在から取り残されたような一種異様な場所だった。(略)逃げているうちに罠を踏んで重傷を負ったショーンは、それを仕掛けた主が所有する農場で看病を受ける。だが、自分は怪我人としてそ...

闇に香る嘘(下村敦史著)

”人間は誰しも老いからは逃れられない。年老いたとき、周りに誰がいるか ―― それが自分の積み上げてきた人生を表すと思う。私の周りには誰がいるだろう。結婚し、娘が生まれ、孫も生まれた。しかし、今や誰一人残っていない。””「・・・苦しみを人と比...