時の旅人(アリソン・アトリー著、松野正子訳)

「読み書きなんぞできなくても、わたしは、ちゃんとうまくやってきた。つまらないものを詰め込んで頭を混乱させたりしないで、いつもすっきりさせとくのさね。」

”安全な世界がそこにありました。立ち去りさえすればいいのでした。けれども、私は、他の人には見えない、秘密の「時」のない、あの世界に入っていきたくてたまらなくなりました。時間が、秒が、くっきりと丸い、透き任せて一粒のしずくに結晶している、あの世界へ。”

”言葉は、誰でも自分の気分にまかせてつづれば良いのであり、それが書くことの喜びの一つであって、人には美しい言葉を作り出す自由がある。そして、いつもいつも同じつづりで書くようなつまらない者であってはならない。”

”シスリーおばさんは賢い人でしたから、今の心配事を口にするようなことはせず、苦難の中で勇気を持ち続けられるように、善意と慰めと楽しみに満ちた雰囲気を作ろうとしているのでした。”

”女王のロケットとジュードが作った古びた木の糸巻き坊やは、私にサッカーズは昔、今のティッシーおばさんやバーナバスおじさんがしているのと同じように勇敢に、そして質素に暮らし、人に与えて見返りを求めず、人生で出会うものを恐れずに受け止めて生きてきた人々の「我が家」であったことを思い出させました。”

「地面から泉が湧き出てくるものを見てごらん、ピネロピー。背後に、隠れた水の力があるからこそじゃ。命と同じじゃ。背後に力がなければならん。人間を苦難と闘わせ、負けずに頑張らせる力が。サッカーズのこの泉は、枯れたことがない。これからも、枯れることはない。いつまでも、いつまでも続いていく。」

”500年のあいだサッカーズの四季を包んできた安らかさが、私の中を流れていきました。それは、あの人たちにしたと同じように私に強さと勇気を与え、私をあの人たちに結びつけました。”

(本文より)

時空を超えた物語。歴史的な出来事とからめた好きな設定。
ちょうどこの本を読んでいるとき、NHKで「その時世界が動いた」とうい番組を放送していて、イングランドのエリザベス1世を特集していた。その中で、スコットランド女王・メアリーのことも出てきた。ネットで調べると、エリザベス1世殺害の陰謀事件であるバビントン事件というのがあり、この陰謀に加担したのが小説にも登場するアンソニー・バビントンだった。
メアリーもアンソニーも後に処刑されることが、後世から来た主人公・ペネロピ―にはわかっている。わかっていて接する10代の少女である主人公の心情。
また、それぞれの「時」に登場するそれぞれのおばさんや、周りの人々の温かさ。
読み進めるうちに引き込まれていきました。
ありがとうございます。

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